アイスクリームと雪景色
里村との電話は楽しかった。

美帆の話に耳を傾け、時々笑ったり、感心したり、彼は意外に聞き上手である。熱エネルギーというより、温泉に浸かって温まる感覚だ。

気持ちよくなって、うとうとしそうなほど……


『……もしもーし、成田さん。起きてますか!?』

「はっ、あれ?」

里村の大きな声で目がさめた。いつの間にか寝落ちしたらしい。

『もう遅いですし、残念だけど電話を切りますね』

「う、うん。ごめんね」

時計を見ると、お喋りを初めてから一時間以上経過している。時間をまったく意識しなかった。

『それじゃ、切りますね』

「そうね、もう寝なくちゃね」

『……』

「……」

美帆が通話を終了させるまで、里村は待っている。

しかし、美帆の指も動かない。何か、物足りない気がした。

『そうだ、成田さん』

「なっ、なに?」

美帆はなぜか、カーペットの上に正座した。
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