彼女を10日でオトします
「ちょ……近いわよ。
もっと離れて」

 言うほど近いかねえ?
 顔と顔、15センチは離れてるじゃないの。
 俺にしてみたら、めっちゃ遠いんですけど。

「キョンは我が侭ちゃんだね。
なんだったら、今、ヒデ呼んでもいいんだけど。
1年男子もそろそろ体育館に集まってる頃だと思うし、盛大なお出迎えが期待できるんじゃなあい?」

 って脅してみちゃったり。
 キョンは、「ぐ……」と、歯を食いしばって悔しいそうな顔を浮かべる。
 ご丁寧に俺をギッと睨みつけるのも忘れない。

 うん、その顔、たまんないねえ。

「たすくさんって、どうしていつも――」

「しっ!!」

 静かにして、って意味なんだけれど、唇に人差し指を当てる代わりに、キョンを抱き寄せてみた。
 どさくさに紛れてってやつ? なんか違うか。

 扉の外、かちゃかちゃって音と、鉄の扉に響くコツン、コツンって音。
 南京錠を開けようとしてるみたい。

 離れようとしてか、俺の腕の中でもぞもぞしているキョン。その耳に向かって囁く。

「来るよ。いい子だから、このままじっとしてて、ね?」

 ぴくんと小さくはねるキョン。

 うわ。キョンちゃん、勘弁してくれ。

 ……マイサンは、じっとしててくれるかしら。
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