彼女を10日でオトします
「ごめんなさい。怒った……わよね」

 眉をハの字にして、不安げに俺の目の奥を覗くキョン。
 その、弱弱しい声のトーンと表情が何だか、意外で、可愛らしくて、不意に抱きしめたくなった。

 自分でも不思議だ。同じ事をコットンやヒデに言われたら、たぶん、怒ってた。
 ヒデだったら殴ってるだろうし、コットンだったらまた泣かせてたんじゃないかな。

 これも、惚れた弱みってやつなんだろうか。

 怒りが湧いてこない。

「もう、ぷんぷんだね」

 こんな説得力のかけらもない嘘も、キョンを抱き寄せるためだけの口実で。
 キョンは、「あ」と小さく悲鳴をあげて、俺の腕に収まった。

「キョン、俺、謝るよ。
すぐには、到底無理かもしれないけど、いつか必ず」

 胸に伝わる振動で、キョンが確かに頷いたのがわかった。
 
 俺もさ、よくお姉さん方に「高校生と思えなぁい」って言われてきたけど、キョンとは全然違うと思う。
 俺の場合は、金払いとか、まあ、なんつうの、ある意味寝技? みたいなことに対してのことなんだろうけど、キョンは違う。

 どうしてこんなに『悟って』いるんだろうか。
 大切なものが何か、ってことを知っているんだろうか。

「そうね、キョンちゃんが俺の隣でブーケトスした後にでも謝ろうかしら」

「全く謝る気ないじゃない」

 俺の肩におでこを押し付けたまま、声を殺してくすくす笑う。

「あるある。それくらい近い将来に謝るよって言ってんのぉ」

「馬鹿ね」

 ああ、俺、キョンのこれに嵌ったわ。『馬鹿ね』が頭の中でリピートされる。
 俺を受け入れてくれている証拠のような気がする。

 ……気がするだけじゃないといいんだけどねえ。
 
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