彼女を10日でオトします
たすくさんの頭の中は、インデックス付きの引き出しで仕分けされていて、好きなときに記憶を取り出せる、だとか。
そのせいかどうかわからないけれど夢は見ない、だとか。
授業に出なくても教科書を眺めているだけで、定期テストはほぼ満点とれる、だとか。
いつか脳みそがパンクしそうで怖い、だとか……。
そんなことをぽつり、ぽつり、と、独り言のように話しながら、材料切ったり、炒めたりしていた。
その、記憶のことが本当だということを、まるで自分の家の台所のように私の知らない道具を出して使う様から、思い知らされた。
そして、また、出来上がった『肉豆腐』が乗ったお皿を目の前にして、さらに思い知らされた。
私がリクエストした肉豆腐は、レシピ本に載っていたそれと、まったく同じだったから。
「キョンのお茶碗は、これだったよね」
私のお茶碗をかかげてそう言うなり、私の返事を待たずして、ジャーからご飯をよそる。
「ささ、食べてみて。俺も料理初めてだけど、書いてあった通りに作ったから、たぶん大丈夫だと思う」
たすくさんは、お茶碗を肉豆腐が盛られたお皿の隣に置いて、私にお箸を手渡す。
そして私の真向かいに座った。
湯気が昇る、肉豆腐と白い飯。
その向こうには、たすくさんのにこにこっとした笑顔。
すごく変な感じ。
現実じゃないような、でも夢より実感はあって。
実際は、知り合ったばかりの人なのに、ずっと昔からこの笑顔を見ていたような、そんな変な感じがする。