彼女を10日でオトします
「さ……した……。
自殺を図ったことがあると言うような事は、本人から伺っていたけれど……」

 本気で、死のうとしたんだ……。
 手首を切るでも、首を吊るでも、飛び降りるでもなく、刺した……。
 どの方法がどうというつもりは無いけれど、きっと、覚悟も、痛みも、想像を絶するものだ……。

 そのときのたすくさんの状況を思うと、胸が圧迫されるような息苦しさを感じた。

「そうか……。キョンちゃんは、直接本人から訊いたのか」

 ヒデさんは、下の前歯を見せて苦虫を噛み潰したように笑った。

「訊いた、という程のことでもないの」

「でも、たすくは言った。
たすくのやつ、俺達には絶対言わないんだよ。
俺達の間じゃ、そのことは、絶対のタブー。
いくら訊いても一切口を割らない」

 そう言いながら、煙草の箱を取すヒデさん。

「駄目よ」

 私の言葉に、煙草を咥えた曇った声で「ん?」と目を大きく開いた。

「1本目は見逃してあげたけど、2本目は駄目。
琴実さんが寝てるのよ。空気が悪くなるわ」

 目をぱちくりさせるヒデさんの口元に手を伸ばして、煙草を取り上げた。

「……はは。なるほど。
気に入った。今の俺には倫理的な説教より効果的だよ、その文句」

 はい、と、ヒデさんに煙草を手渡すと「キョンちゃんは厳しいね」と文句をたれながらも、箱にさし戻した。

「で。どうする?」

 ポケットに煙草をしまったヒデさんは、そう尋ねてきた。

 そんなの決まってる。

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