彼女を10日でオトします
 名前なんて知らないわよ。――彼女の人数は知ってるけど。

「あちゃー。響ちゃん聞いちゃったんだ?
あいつ、俺のいない時間知ってて、その隙にいつも女連れ込むんだよなぁ……まあ、悪いやつじゃないんだけど」

「悪いやつじゃない!? 保健室で、あ、あんなことして、しかも、彼女が98人いて、なおかつ合コンに行くようなやつ!
悪いやつに決まってるじゃない!」

「あはは! 響ちゃん、ばっちり盗み聞きしたんだ」
 
「ち、違うわよ! 変態男の声が大きいから、勝手に耳に入ってきたのよ!」

 私は、布団をバシバシ叩いて猛抗議する。
 貴兄は、そんな私の頭を優しく撫でた。

「響ちゃんは、すぐにムキになる。可愛いなあ。生まれた頃から全然変わらない」

 生まれたころからって……。ちょっと大袈裟じゃない?

 確かに、生まれたばかりの私を初めて抱いたのは貴兄って聞いているけれど。

「私は……」

 小さな声で呟くと、私の頭の上のあった貴兄の手が顔の横にすべり落ちてきた。

 貴兄は、ベッドの上に腰を下ろす。硬いスプリングが、ギシ……っと悲鳴をあげた。


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