彼女を10日でオトします
 皮膚と皮膚がぶつかる乾いた音、と同時に骨どうしがぶつかる鈍い音が痛みと共に頭に響いた。

 でも。

「いったぁ……」

 そう言ったのはキョンの方で。キョンのグーに持っていかれた顔を正面に戻すと、胸の前で拳を握って蹲っていた。

「キョン、大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないわよ!! どうして殴られた方が平然としてて、殴った私がこんなに痛いのよ!?」

 ……まだ怒ってるよ。
 キョンは、目に涙を溜めながら、睨み上げる。

 キョンだ。
 キョンがここにいる。

「だって、キョン、下手なんだもん。ぐーで殴るの初めて?」

「当たり前でしょ!! ああ、痛い」

 うずくまるキョンの目の前にしゃがんで、胸の前でさするそれを手に取った。

「あーあ。腫れちゃって。慣れない事するからだよ」

 『初めて』ということが一目でわかる、拳の関節が突き出た腫れた箇所に手のひらを乗せた。

 心の中で「痛いの痛いのとんでいけー」と呟いていると、

「……よかっ……た」

 ほろり、花びらが落ちるみたいに儚い、キョンの声が聞こえた。

 

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