彼女を10日でオトします
 ふわり。

「え……?」無意識のうちに、俺の口からそんな間抜けな声が出ていたのは、いつかバスの中でかいだシャンプーの香りが鼻腔をくすぐったから。

 キョンの顔が、ダウンジャケット、俺の胸に埋まっていく。

 キャメル色のコート越しでも細いとわかる腕も、俺の脇から背中にかけて埋まっていく。

 ばくん。
 跳ねる心臓。
 キョンの耳にも届いたかもしれない。

 俺……キョンに抱きしめられてる!?
 ゆ、夢?
 寒さのせいでいつの間にか寝ちゃってた?
 ここって、天国だったりする?
 寝ちゃって、そのまま、俺、死んだってオチ?

「生きてて……間に合って、よかった……」

 キョンは俺の胸に顔をうずめながらそう、小さく呟いた。

 生きてて、間に合って……?

「は?」と俺。まもなくして、すぐに、
「は?」とキョン。
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