彼女を10日でオトします
大きな門の横にある勝手口から、お寺の境内に入る。
インターフォンを鳴らして、用件を述べると、すぐに玄関が開いて、スレンレスの小さなトレイにお線香を乗せたおばあさんがゆったりした足取りで出てきた。
「ええと……」
「在原です」と名乗ると、おばあさんは「いつもご苦労様」と破顔してみせた。
裏の勝手口を出て、一方通行の細い道を横断する。
小さな階段を昇って、足を踏み入れた。
いい天気。空を見上げれば、ちぎったわたあめみたいな雲しかなくて。
いつかの屋上から仰いだ青空を思い出した。
あの時は寒かったな。
薄手のカーディガンが、春風を孕む。
目線を元に戻すと、若い男女が手を合わせていた。
兄妹には見えない。
墓所デートって最近はやっているのかしら。
不謹慎とは思いつつ、思わず頬が緩んでしまう。
水は後からにして、先にお線香を供えようかしら。
腕が2本しかないことを疎ましく思いながら、墓石に向かった。
インターフォンを鳴らして、用件を述べると、すぐに玄関が開いて、スレンレスの小さなトレイにお線香を乗せたおばあさんがゆったりした足取りで出てきた。
「ええと……」
「在原です」と名乗ると、おばあさんは「いつもご苦労様」と破顔してみせた。
裏の勝手口を出て、一方通行の細い道を横断する。
小さな階段を昇って、足を踏み入れた。
いい天気。空を見上げれば、ちぎったわたあめみたいな雲しかなくて。
いつかの屋上から仰いだ青空を思い出した。
あの時は寒かったな。
薄手のカーディガンが、春風を孕む。
目線を元に戻すと、若い男女が手を合わせていた。
兄妹には見えない。
墓所デートって最近はやっているのかしら。
不謹慎とは思いつつ、思わず頬が緩んでしまう。
水は後からにして、先にお線香を供えようかしら。
腕が2本しかないことを疎ましく思いながら、墓石に向かった。