彼女を10日でオトします

 水を汲み、花を活け、区画内をざっと掃除して、手を合わせた。

「たすくさん、月日って経つのが早いのね。あれから、5ヶ月も経った」


「あれから、って。
俺が死んだような口ぶりいい加減よしてよ、キョンちゃん」

「あら、死に底無いさん、いつ来たの?」

「むう。たった今」

「随分遅かったじゃない」

「いやぁね、母さんがアレ持ったのか、コレ持ったのか煩くって」

 私の隣にしゃがんだたすくさんは「もう、ガキじゃねーっつうの」と愚痴りながらも眉尻を下げてはにかむ。

「うまくいってる?」

 たすくさんのお母さんは、初犯ということもあって実刑は免れ、執行猶予3年、とのこと。
 今は、たすくさんのアパートで暮らしている。

 当のたすくさんは、一時は意識不明の重態に陥った。私は未だにその時の心情を思い出しては嫌味ったらしい口をきいてみたりして。
 現在は、退院して1週間に1回通院、というところまで回復。

「ぼちぼち」

 そして、たすくさんは二重生活に勤しんでいる。アパートと実家を行き来するという器用なことをこなしている。「両親モトサヤ大作戦」なんだそうな。

 そうそう、川原さん。彼は、現在、裁判中。


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