彼女を10日でオトします
「ま、俺の計画だからね。必ず成功するよ」

 たすくさんのどこから湧いて出るのかわからない自信は相変わらず。

「健闘を祈るわ」

「うわ。キョンちゃん、ドライなんだから。
おれ達の子供におじいちゃんとおばあちゃんいらないっていうの?」

 私たちの関係も……

「私、最近、気づいたのよ。
あなたよりも素敵な男性はこの世にごまんといるって」

「キョン、酷い……俺を捨てる気?」

「素敵な出会いがあれば」

「ぎゃん。俺、もう、立ち直れない……」

「そ。じゃあ、先行ってるわ」

 立ち上がると同時に腕を下に引っ張られた。
 その拍子にたすくさんの腕の中へダイブ。

「キョーン、さっき、俺のこと、『あなた』って呼んだねえ。
は、ぐ、む、ぐ」

 う……。

「ちょっと、たすくさん、お母さんとお父さんの前で――」

「だからこそいいんじゃん。響子は俺が貰いますって宣言」

「バ、バカじゃないの!?」

 私たちの関係も相変わらず、で。

「キョン、今、幸せ?」

「な、何よ藪から棒に! ふ、不幸そうに……見えるのなら、たすくさんの目は節穴ね」

「そ。よかった。俺も。
今、さいこーに幸せ。たぶん、一番」

 私の耳元で囁いたたすくさんの声は、偶然吹いた突風に乗って南の岸壁に届くはず。

 きっと。

         了

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