彼女を10日でオトします
「響ちゃん、君は完全に包囲されている! 大人しくそこから出てきなさい!」

 階段をのぼりきると、貴史ちゃんがひとつのドアに向かって叫んでんの。そのドアには小さく『W.C』。

 ぱっと見た感じで、大体の状況は把握できたけれど、貴史ちゃん。
 そのフレーズは、2時間サスペンスでも最近は、なかなか聞けないほどのハイセンスなチョイスじゃないの。

「お姉ちゃんの馬鹿! こんな恥ずかしい恰好で人前に出ろっていうの!?」

 『W.C』の中から、キョンの声。

 どんな恥ずかしいカッコだっていうのよ。気になるねぇ。

「燈子さん、キョン、トイレの中に篭もっちゃったの?」

「そうなのよ。昨日は、見事阻止できたんだけどね。あまりの可愛さに、私、動けなくなっちゃって、その隙に……」

「響ちゃん、響ちゃん、聞こえるか。お前の姉ちゃんは悲しんでいるぞ!」

 貴史ちゃん、真顔で言わないでよ。こっちが恥ずかしくなってくるじゃない。

「あぁ、響ちゃん、お姉ちゃんはそんな子に育てた覚え――」

 あーあ、燈子さんまで。さながら、昭和の銀幕女優のセリフを遮って、キョンが一喝。

「うるさぁいっ!」
 
 そりゃあ、そうなるでしょ。燈子さん、悪ふざけしすぎ。

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