オトナだから愛せない
「俺のじゃなかったら許さないから」
「胡桃、明日のバレンタインどうする?」
「どうするって?」
休み時間、パックの中のりんごジュースをすすっていると突然現れた秋ちゃん。秋ちゃんの質問に質問返しをすれば「手作りするか、しないかって話!」と、強めの言葉が返ってきた。
「秋ちゃんは作るの?」
「んー、迷い中。そもそも彼氏いないし」
「あー、 だね」
「だね、じゃないよ!胡桃だっていないじゃん!」
「……たしかに」
秋ちゃんにすかさず突っ込まれ、これは作らないという方向で話を進めたほうがいいなと思った。
「あ、でも杉野にはあげるんでしょ?」
「え、なんで杉野くん?」
「いや、奴はほしいと思うよ、胡桃からのチョコレート」
「そーかな?」
「まあ、いいや」
やれやれと頷く秋ちゃんを横目に、皐月くんの顔が頭に浮かぶ。皐月くんになにか手作りしようかな。でも帰ってくるの遅いかな。
「とりあえず私は友達に配るようでクッキーでも焼こうかな」
「え、秋ちゃんのクッキー!私にもちょうだいね!」
「うん!いっぱい焼いてくるよ!」
そう宣言した秋ちゃんは「じゃ」と、ひと言残し自分の席に戻っていった。