オトナだから愛せない
「俺のじゃなかったら許さないから」





「胡桃、明日のバレンタインどうする?」

「どうするって?」




休み時間、パックの中のりんごジュースをすすっていると突然現れた秋ちゃん。秋ちゃんの質問に質問返しをすれば「手作りするか、しないかって話!」と、強めの言葉が返ってきた。




「秋ちゃんは作るの?」

「んー、迷い中。そもそも彼氏いないし」

「あー、 だね」

「だね、じゃないよ!胡桃だっていないじゃん!」

「……たしかに」




秋ちゃんにすかさず突っ込まれ、これは作らないという方向で話を進めたほうがいいなと思った。




「あ、でも杉野にはあげるんでしょ?」

「え、なんで杉野くん?」

「いや、奴はほしいと思うよ、胡桃からのチョコレート」

「そーかな?」

「まあ、いいや」




やれやれと頷く秋ちゃんを横目に、皐月くんの顔が頭に浮かぶ。皐月くんになにか手作りしようかな。でも帰ってくるの遅いかな。




「とりあえず私は友達に配るようでクッキーでも焼こうかな」

「え、秋ちゃんのクッキー!私にもちょうだいね!」

「うん!いっぱい焼いてくるよ!」




そう宣言した秋ちゃんは「じゃ」と、ひと言残し自分の席に戻っていった。



< 135 / 180 >

この作品をシェア

pagetop