オトナだから愛せない
「そんなのいちいち許可とるな」
今日は1日ついてない。
提出しなければいけないプリントを忘れ、担任にネチネチ怒られ、数学の分からない問題に当たりみんなに笑われて。もう、明日は学校に行きたくないな。落ち込んでいるときの私の思考はどんどんブルーになっていく。
「皐月くんに、甘えたい……」
冷んやりと乾いた空気に独白が溶けた。
どうしようもなく弱っているとき、私に効く特効薬なんて皐月くんしかいない。
家までの道のり、信号待ちをしながら無意識に送った皐月くんへのメッセージ。

返事を受け取って、会いたい気持ちが加速した。無心で歩いて家を目指す。
マンションまで辿り着き5階で止まっていたエレベーターを待っている時間さえ勿体無く感じて一気に階段を駆け上がった。
自分の部屋の扉ではなく皐月くんの部屋の扉の前で足を止める。インターフォンを鳴らせば私の気持ちとは比例することなく軽快な音が響いた。
その後すぐに、ガチャリと鈍い音がして顔を上げれば扉を開けたのはもちろん私の会いたかった人。