オトナだから愛せない
「愛してやるから覚悟しろよ」



待ちに待った時が来た。











皐月くんとの昨日のやりとりを見て、ちょっぴり悲しくなった。
卒業式は皐月くんに見てほしかったななんて。



卒業証書を手にした私は、高校生を卒業する。




「胡桃!みんなで写真撮ろう!」

「うん」




最後のホームルームを終え、帰り支度をしていれば秋ちゃんに腕を組まれ引かれるようにみんなの輪の中へ連れて行かれた。




「砂川さんもっと笑って」

「う、うん」

「本当だ!胡桃顔硬い!」

「秋ちゃんそんなことないよ!」

「じゃあ、撮るよー!」




苗字を呼ばれて不意に“砂川”私がそう呼ばれるのも今日で最後なんだと思った。すでに私は“砂川”ではないのだから当たり前なのだけど。



楽しかった高校生活。仲のいい友達と離れるのは寂しい。
でも、それ以上に嬉しいことが待っているのも事実で。



これからは堂々と“華井 胡桃”と名乗って生活していくんだ。




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