オトナだから愛せない
「口が悪いのは照れ隠しです」


と、皐月くんとの不毛なやり取りをしたのは3時間ほど前のことだ。
結局私はひとりでごはんを食べ終えた。
皐月くんのバカ、ケチ。なんて悪口のオンパレードをひとりで呟いてみたけれどなんだか虚しくなるばかりで。
ソファに背中を預けて時計に視線を向けてみる。時刻は夜の11時。皐月くんはまだ帰ってきていないのだろうか?
連絡したら、仕事の邪魔するな!とか言われるかなぁ。と、手にしたスマホじっと見つめて考える。

と、タイムリーなことに掌の中のスマホは皐月くんからの着信を知らせた。
「もしもし!」
《なんだ、まだ起きてたのか》
勢いよく電話に出れば第一声で冷たい言葉を浴びせられた。そっちが電話をしてきたくせにあんまりじゃないだろうか。