オトナだから愛せない
《胡桃?》
「……」
《胡桃?聞いてるか?》
「……」
お泊りよりも、皐月くんとの買い物に惹かれている私は最低な奴だ。でも、
《拗ねるなよ。分かったよ、胡桃が選んでいいから。だからとりあえず明日のその勉強会は断れ》
「うん」
《お前、絶対だぞ》
「分かった」
《……明日になって、やっぱり勉強会に行くとかなしだからな》
「せっかく皐月くんが誘ってくれたのに、そんなことしないよ」
《どうだか、胡桃はバカでアホだから》
「ひどい!」
皐月くんは知らないでしょ。あなたの誘いが私をどれくらい喜ばせるか。友達も大事だよ。でも、それ以上に皐月くんに会える時間が少なくて寂しいから。
ぎゅっと胸が詰まって、鼓動が速くなる。
「明日、楽しみにしてるね!」
《迎えに行くから、家にいろよ》
「うん!」
《(俺って、本当に大人げない……)》
「お買い物デート楽しみだなー」
《(でも、大人げなくたってなんだって俺以外の男と一緒に泊りなんて、死んでも嫌だ)》
「かっこいいスーツ選ぼうね」
《(頼むから、俺だけ見てろよ……)》
皐月くんとの電話を切ったあと、教室に戻り秋ちゃんには「用事が入っていたことを忘れていた」と言って、申し訳ないけれど勉強会はお断りさせていただいた。
