オトナだから愛せない
「奇妙な関係」
マンションのお隣に住む皐月くんはちょっと。いや、かなり私に手厳しい。
時刻は朝の6時ちょっと過ぎ。
ピンポーンと鳴らしたインターフォンからの応答はなし。
「皐月くんめ、また私に挨拶もなく勝手に仕事に行ったな!」
膝上15センチのチェックのスカートのポケットからピンク色のカバーを纏ったスマホを取り出し、すぐさま画面の上で指を滑らせた。

皐月くんから返ってきたメッセージには温かさのカケラもない。皐月くんはどうしてこうもドライなのでしょうか。
私は朝起きたらいちばんに皐月くんに「おはよう」って言いたいし、学校が終わったら今から帰るねって報告もしたい。
皐月くんはかっこいいから会社で綺麗な女の人に狙われてないか心配だってするし、帰ってきたらいちばんに「ただいま」って言いたいのに。
皐月くんは私の心配なんてこれっぽっちもしてなくて、私に興味なんて微塵もなくて。私ばかりが好きで、嫌になる。
皐月くんの家の前で止まっていた足を動かし、3秒で到着した自分の家の扉を開いた。
第一、なんで隣に住んでるの?なんて、いまに始まったことではない、なんなら私が望んでそうしたこの状況に「はぁ〜」と盛大にため息を溢した。
と、ピコンと掌の中でスマホが鳴る。
視線を向ければ、ため息の原因である人物からのメッセージを受信した。