オトナだから愛せない
「君の誘いなら」




「華井専務」




時刻は19時。デスクでキャンペーン用の新しいプレゼン資料に目を通していればやたら甘ったるい香水の香りを纏った女がひとり俺の元へやってきた。


仕事にその香りはいかがなものか?と思ったが、とりあえずそれは後でにするとして。




「どうした?」

「あの、今日ってお仕事終わったあとお時間ありますか?」

「なんだ、なにか仕事のことか?」

「いいえ、あの新しい口紅の広告案を考えているんですが、いいものが思いつかなくて相談に乗っていただきたくて」

「化粧品なら俺ではなくて女性の先輩に聞いたほうがいいと思うぞ。最終チェックは俺がするが」

「いいえ、あの、華井専務とお話しがしたくて」




呆れた。


人が時間を割いて話を聞いていればそういうことか。と、盛大にため息をお見舞いしてやりたい気分。



商品の広告や、ウェブデザイン、イベントポスターの製作等を行っているこの会社は化粧品や、食べ物、本や、文房具等、請け負う商品は様々で。



商品の種類が様々ということはもちろん働いている人間も男女問わず年齢問わずいるわけで。



< 69 / 180 >

この作品をシェア

pagetop