オトナだから愛せない




「なんで、どうして……」

「……皐月、くん?」

「電話しても繋がらない、メッセージ送っても既読にならない、心配して家まで来てみれば、なんでそんな話になるんだよっ!俺がお前と別れたいなんていつ言ったよっ!」




珍しく声を荒げる皐月くんに知らない男の人を感じて、体に力が入った。すると私の手首を掴んでいた皐月くんの手の力も強くなる。
あれ、どうして私が怒られてるんだっけ?




「だって、皐月くんが……」

「俺がなに?」

「……皐月くん、さっき綺麗な女の人とデート……してたもん……」

「は?あれは、仕事の打ち合わせで、」

「嘘つき!」

「嘘じゃない」

「だって、あの人皐月くんのこと、皐月さんって下の名前で呼んでたもん。仕事相手がそんな呼び方、しないもん……」




そこまで言い切ると皐月くんはなんとも盛大にため息を吐き出した。




「なに、もしかしてそれを見て、俺の本命はさっきの人で、胡桃とは遊びで付き合ってて、バレたから胡桃とは別れると思ったわけ?」

「……」

「どうなんだよ、胡桃」

「……はい」




私の思考をいとも簡単に読み取った皐月くんは再度、盛大にため息を吐き出した。



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