文の幸福
・仁side


根暗子が図書館の奥の方に向う後姿をみて思う。

この暑さで長袖って凄いな。
チラリと見える手やスカートと靴下の間の肌は尋常じゃなく白い。もしかして白人か?とも思いながら、ピッピッピと返却作業をする。

図書館の吹き抜けの二階部分に掛かる時計をみるとまだ四時半、今日は五時まで。
後三十分かー、と思い時計から視線を下げると、根暗子の顔がみえた。


初めてみるその顔に目を見開いた!
どんだけ、クソダサいガキだと思っていたが、小さい顔にアーモンド形の大きな目、この距離からでもわかるほど黒目が大きい。

しかし、死んだ魚の目をしているぞ?

見ていると段々と目がランランとし始め、顔の血色がよくなった。

そして、彼女がニコっと笑った瞬間呼吸が逆流して息が止まった。

彼女は近くの本棚に本を入れて死角に消えてしまった。

気になって、そこに行ってみたが根暗子の姿は見当たらない、
仕方なく彼女が置いたであろう本をとった。

いったい何をみてあんなに絶望していたのだろうか・・・肉食性植物図鑑・・・どこに絶望したんだ?戻って時間をみたらまだ4時35分。5分しかたってねー・・・。
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