無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
だんだんと近づいてくる。
足音からして、多分ひとりだ。
ギギ、と尖った音のあと、扉がゆっくりと開かれた。
「っ、....」
コツン、と足音を鳴らして、ゆっくりと近づいてくる。
私の目の前で止まって、屈んだはずみに痛んだ銀髪が揺れた。
色のない切れ長の瞳に捕まって、ああ、と胸の奥の方から滲み出てくるものは、なんだろう。
「────久しぶり」
先ほどの真顔はどこにいったの、と問いかけたくなるほどのニヒルな笑み。
今の暗い雰囲気とは真逆と言えるくらいに、楽しそうな目の前の人物。
『────俺は、お前が嫌いだよ』
今回のすべての元凶、私にとっては恐怖の根元。
8年ぶりに会ったこのひとは、なにも変わってない。
ぽたり、こころに黒い染みが落ちていく。
「....恐怖で声もでない?はは、まあそーだよな。今まで生温い環境で生きてたおまえには、全く縁のないことだよな」
滲み出るほどの嫌悪感を、このひとのぜんぶから感じる。