晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
晴れ所により雷雨
退職願を提出して2週間後。

私は朝の天気予報を見て、鞄に折り畳み傘を忍ばせた。

今日の天気は、晴れ所により雷雨。

雷雨って…

思わず苦笑してしまう。

ゲリラ豪雨とかあるのかな。



午前中はとても蒸し暑くて、外出先から戻る営業さんたちは汗をたっぷりかいていた。

けれど、当たって欲しくない予報ほど当たるもので、夕方5時過ぎから雲行きが怪しくなり、私が帰ろうとする6時過ぎには、見事に激しい雷雨となっていた。

会社を出ようとエレベーターを1階で降りると、速水課長がエントランスから自動ドア越しに外を眺めていた。

「お疲れ様です。」

私が声を掛けると、速水課長は振り返って、

「ああ、お疲れ様。
立川さん、用意がいいんだな。」

と私の手元を見て言った。

傘、忘れたのかな?

「あの、傘ないんですか?」

私が尋ねると、

「ああ。でも、俄雨だと思うから、
少し待ってみるよ。」

といつもの優しい笑顔で答える。

私は右手の傘を少し持ち上げて言った。

「よかったら、駅まで一緒にどうですか?」

課長は少し固まって、

「いいのか?」

と私の目を見る。

私が無言で頷くのを見ると、課長は私から傘を受け取って、差してくれた。
< 7 / 95 >

この作品をシェア

pagetop