夜明け3秒前
5.曙
ぱちっと目を開けると、流川くんが目の前にいた。
綺麗な顔ですやすやと眠っている。


昨日泣いて、そのまま眠っちゃってた……?
まだ完全に覚醒していない頭で考えるけれどよくわからない。


一旦ベッドから起き上がろうとして気がつく。
私の左手と彼の右手が繋がれていることに。


……え?ここは私の部屋で、私のベッドで……
でも、流川くんと一緒に寝てて……?


「……わああっ!?」


そこでやっと今の状況を理解した。
驚いて、彼はまだ眠っているというのに大声を出してしまう。


「……んん」


ああ、起こしちゃったかも……!
でも何もできずに、彼の目がゆっくり開くのと同時に目が合う。


「……おはよ」
「おっ、おはよう……」


寝起きの声で挨拶をされて、反射的に返す。
繋がれていた手がそっと離れて安心したけれど、残念だなとも思ってしまう。

流川くんはまだ寝ぼけているのか、何もしゃべらずにじーっと私を見ていた。
それが無性にドキドキしてしまって、顔が熱い。

すぐに耐えられなくなって、慌ててベッドから出る。
ちょっと転びそうになったけれど、すんでのところで持ちこたえた。


「え、えーっと……昨日はごめんね、だいぶ迷惑かけちゃったみたいで……」

「んーん、全然いいよ」


起きたばっかりだからか、彼の雰囲気はいつにも増して柔らかい。
すごくふわふわしてる。


「……よく眠れた?」


三度目の彼の問いにドキッとする。
だけど。


「……うん、すっごく」


今回は『嘘は言ってない』なんて言い訳も必要ない。
夢も見ず、本当にぐっすり眠れた。


こんなに目覚めがいい日なんていつぶりだろう。
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