夜明け3秒前
「それはよかった」


流川くんはにこっと微笑む。
いつもと変わらない、優しくてどこか温かい、そんな表情。

だけど、私はいつも通りじゃなかった。
彼を見ているとなんだかとてもドキドキして、顔に熱が集まるのがわかる。


「え、えっと……」


それに何を話したらいいかわからない。
頭が真っ白になる。


「勝手にベッドにお邪魔してごめん。なんか凛月を1人にできなくてさ」


彼は静かにベッドから起き上がる。
変な距離感……こんなに気まずく感じているのはきっと私だけだ。


「あっ、もちろん何も変なことはしてないから!……って、これがバレたら友利に怒られそうだな……」


何ともいえない表情をして、ぶつぶつと何かを言っている流川くん。
そんな顔していてもかっこいいなあ……って、何考えてるんだろう私!


「とにかく、勝手に一緒に寝てごめんな。嫌だっただろ?」

「うっ、ううん、大丈夫!驚いただけだから……」


あれ、やっぱり私なんかおかしい……!
話すだけでドキドキして……今までこんなことなかったのに。


「ほんと?ならよかったけど……あ、コーンスープ忘れてたな」


流川くんがとことこと歩いてこちらに来る。
私のすぐ後ろにある机に置いてあったマグカップを取ると、さっきよりも距離が近くなった。


綺麗な顔、私よりも高い身長、少しごつごつした手。


『……いいよ、我慢しないでたくさん泣いて』


ふと昨日のことを思い出す。
そうだ、私昨日泣いてそのまま抱きしめられて……


「凛月?」
「えっ!?」
「すごい顔赤いけど……」
「だ、大丈夫っ!ごめん、私、先下降りるね!」


自分の分のマグカップを持って、急いで部屋を出た。
もう完全に冷え切ったコーンスープがゆらゆら揺れる。


ど、どうしよう……!
なんか、なんか私変だ……!
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