夜明け3秒前
逃げるようにトントントンと階段を下りていく。
1階では清さんがソファに座ってゆったりしていた。


「ん?凛月さんか、おはよう。いや、もうお昼だからこんにちは、かな」


ははっと楽しそうに笑う清さん。
"お昼"と聞いて、驚いて時計を見る。

もう12時になるところだった。
昨日何時に寝たかはわからないけれど、こんな時間まで熟睡していたなんて……


「ごめんなさい、だいぶ寝坊しちゃって……」

「かまわんよ。休みなんだから、好きな時間に寝て好きな時間に起きたらいい」


軽快に笑っているのを見て少し安心する。
あの家も、いつ寝て起きても成績に響かない限り何も言われないけれど、清さんは見守ってくれている、そんな感じがするから。


「ところで、千那がどうしているか知っているかい?もし起きているなら、昼ご飯の準備をしようと思うんだが」


流川くんの名前が出て、ドキっと心臓が跳ねる。
起きてます、そう答えようとしたとき、階段を下りてくる足音が聞こえた。

すぐにひょこっと流川くんが姿を現す。


「おはよう千那。よし、2人とも起きたことだし、準備しようか」

「おはようじいちゃん。ありがとう」


清さんがソファから立ち上がる。
私たちの方へ歩いてくると、手に持っていたマグカップをキッチンへと持って行ってくれた。


「ありがとうございます」

「どういたしまして。少し時間がかかるから、ゆっくりして待っててくれるかい」

「はーい」


清さんが行ってしまったから、流川くんと2人になる。
さっきは変な態度をとってしまったし、やっぱり緊張する……!
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