15年目の小さな試練
「あ、もちろん美歩さん、笑って受け入れてくれたよ? 叶太はいくらでも預かるから、陽菜ちゃんの事を気にしてあげてって」

 うん。お袋ならそう言いそう。

 大体、久々に叶太の世話するのだって、楽しそうだし。
 隣の家にいるんだから、しょっちゅう会ってるのだけど、やっぱり寝泊まりすると違うらしい。

「で、その後、叶太くんの熱が全然下がらないって聞いて、改めて連絡したんだよね。もしかして、陽菜のせいじゃないかって」

「むしろ、叶太ならハルちゃんのために熱なんて気合いで下げそうですけど」

 そう言うと、おばさんは面白そうに笑った。

「美歩さんも最初同じ事を言ってた。

 ……だけど、叶太くんが私に送ってくるメールとか見ても、気にしすぎ! ってくらいだったしね。晃太くんとこには、もっと激しかったんじゃない?」

 そう言われて、

「ええ……まあ」

 と苦笑いすると、おばさんも苦笑した。

「そんな訳で、あんまり下がらないから、美歩さんもやっぱり気疲れって思ったんじゃないかな?」

「そうかも知れませんね。……でも、火曜日の夜からはスマホとパソコンを返してもらえるのは、一日十五分だけなんで、ハルちゃんと話して終わりですね。ハルちゃんの事を考えても、ハルちゃんのために何かするだけの時間はないはずです」

 そう言って笑うと、おばさんもくすくす笑う。

「そんな訳だから、叶太は大丈夫だと思いますよ。結局、自分が体調を崩したら、ハルちゃんを一人にすることになるって、嫌と言うほど分かったと思うし」

「ああ、確かに」

「あいつには、それが一番効くんじゃないかな」

 二人でひとしきり笑ったところで、俺は牧村家をおいとました。


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