少女漫画的事柄
「いっ、てぇ」
叩かれた頬がじんじんと熱を帯びて傷んでいる。叩かれた、この俺が。
この、神楽坂玲人が?
しかも、なんて言ったあの女。キモイ、と確かに聞こえた。
俺にキスされたい女はこの学校に湧いて腐るほどいるのに。そんな俺を確かにあいつはキモイといった。生理的に無理、とも言っていた。
「……く、はは、はっ」
不思議と込み上げてきたのは怒りの言葉ではなく笑いだった。じん、と口内が痛むがお構い無しだ。
「……あの地味メガネ女、地獄見せてやる」
人は本当に腹が立つと逆に笑えてくるのだと、俺は今日初めて知った。