異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「綺麗……宝石箱みたいね」


言葉少なに感想をこぼした王妃様は、ランチボックスの中身に釘付けになっている。

私は透明な瓶に入ったプリンの蓋にチェックや花柄のペーパーをひとつひとつ被せてリボンで留めランチボックスの中に並べあと、その隙間を埋めるように庭師の方に許しを得て茎の折れてしまった薔薇を詰めたのだ。


「かぼちゃ豆腐プリンです! 豆腐……トーフーを使ってるので、普通のプリンを十五個食べるより身体に優しいんですよ」

「さっそくいただくわ」


王妃様はパンッと手を叩いて使用人を呼びつけると、ティーセットを用意させる。

使用人がアールグレイの紅茶をサーブし、プリンとともにアフタヌーンティーを楽しむ王妃様を私はドキドキしながら見つめた。


「このふるふる震える感じはプリンそのものね。色は……普段食べているものより、濃い気がするわ」

「王妃様、それはかぼちゃの色です。かぼちゃは甘味がありますから、一緒に入れると砂糖を少なくできるんですよ」

「とびっきり甘いプリンが好きなのだけれど、本当にわたくしを満足させられるのかしら」


半信半疑でプリンを食べた王妃様は、スプーンを口に入れたまま目を見張った。

その目がとろんと蕩け、頬を押さえて悶える様は幸福に満ちた顔をしている。


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