異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「変なウサギじゃないわ。エドガーのブローチ分の食材をちゃんと運んでくれているか、見張っておかないと。お金勘定は大事なのよ」
可愛らしい顔立ちのロキは、まるで誰よりも年長者であるかのような物言いをする。
つい、お母さんと呼びたくなってしまうくらいに。
「私がそんな詐欺師のような真似をすると?」
ぴりぴりとするオリヴィエに空気が張りつめていくのを感じた私は、場を取り直すように手を叩く。
「あー……そうだ! 皆でバルドさんたちのお弁当を作りましょう!」
「はあ? 僕の話はまだ終わってな──」
「ね? それがいいです!」
私は「なにがいいんですか!」と文句を言っているオリヴィエの背中を押して、無理やり皆を昼食作りに巻き込んだのだった。
こうして、国境線の森での戦で勝利を収めたパンターニュ騎士団は駐屯地で私の作ったお弁当を平らげたあと、王都に帰還することになった。
「それにしても、僕たちまで城に呼ばれるなんて驚きですね。まあ、僕は王城との取引をこじつける機会にできますから願ったり叶ったりですけれど」
騎士団の皆さんのあとを王城御用達の馬車に乗って追っていると、オリヴィエは悪い顔をしてにやりとしている。
そうなのだ。私たちは今、騎士団の皆さんとともにパンターニュ城のある王都へ向かっている。
なんでも、侵略してきた隣国のベルテン帝国からこの領地を守りきれたのは私たちの尽力があったからだとバルドさんが進言したらしく、パンターニュの王様が直接会いたいとおっしゃられたのだとか。