異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「エドガー、あの……申し訳ないんだけど、さすがにこれは綺麗にしないとまずいと思う。ここにずっといたら、健康被害が出るよ」
「これでも三日前に大掃除したんだ。でも、発明に没頭してるとあっという間に足の踏み場が……うわああっ」
私に気を取られたからか、エドガーはなにかに足を躓かせて、ごみの山の向こうに消えていった。
このままでは怪我をしかねないので、私は居候初日からロキと一緒にエドガーの家を掃除する羽目になるのだった。
翌日、目が覚めると至近距離にロキの顔があった。
まだ眠っているので、私は起こさないようにベッドを降りると綺麗になった部屋を見回す。
このベッドや椅子、テーブルといった家具も全部、エドガーの手作りらしく、売り物にしてもなんら問題はないクオリティだ。
そして、なによりすごいのはこの家もエドガーが自分で建てたということだ。
「エドガーは発明家兼、大工さんだよ。作るのが本当に好きなんだなあ」
作るのが好きという意味では、私の料理と似通ったところがあるのかもしれない。
そう思いながら、私は着替えをするためにタンスを開ける。
昨日、片づけが終わったあと。
私はエドガー家に夕食の材料がなにもないことに気づき、皆でエーデの町に行った。
そのついでに購入した寝間着を脱ぐと、白のブラウスにマスタードイエローのワンピースを重ね着する。
最後に茶色い革のブーツを履いてしっかり紐を絞めると、お母さんのレシピ本を抱えてリビングに向かった。
この世界にも時間の概念があるようで、壁に掛けられた大時計は午前七時を指している。
大時計の振り子部分にあるガラス板の向こうには、お姫様と王子様の人形が入っていて、午後十二時になるとワルツを踊り始めるらしい。
この時計のように、彼の発明品がこの家にはあふれていた。
暖炉にはすでに火が灯っている。
発明のために作られた離れの作業場から鉄を打つような音が聞こえてくるので、エドガーがもう起きているのだろう。