異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「えっ、雪? どこに行くの?」
「洗面所!」
戸惑っている彼の手を強引に引き、洗面所に連れてくると鏡の前に座らせる。
やったことはないけれど、私はハサミを手に彼の鬱陶しいほど乱雑に生えている髪を切る。
エドガーは唖然としていたからか、大人しく髪を切られていた。
だが、眼鏡にかかるほど長い前髪に取りかかろうとしたとき、暴れだす。
「待って、そこだけはダメだ!」
「問答無用!」
抵抗するエドガーから眼鏡を奪い取って前髪をばっさりと切り落とすと、綺麗な碧眼がよく見えるようになった。
前髪がよほど大事だったのか、失った事実に打ちひしがれている彼に「髭を剃って」と洗面台に置いてあったカミソリらしき道具を握らせる。
「いや、髭がなくなったら俺の顔が表にでちゃうから、できな――」
「エドガーは素性を隠さなきゃいけないようなこと、してないでしょ?」
「いや、その……してないとは言えないというか……」
もごもごと言い淀んでいる彼に、私はずいっと顔を近づけて凄む。