恋なんて、しないはずだった
「きゃー!碧ちゃんが名前で呼んでくれた!嬉しい!」



ここまで喜んでくれるのを見ると、恥ずかしかったけど呼んでみてよかったって思った。



「おい、アズだけずりーな」



その隣では、むすっとしてる杉浦くん。



「大我.......」


「ひょっ!?」


「おい、なんだよその声」


「ビックリしすぎて変な声出た」



人の名前を呼ぶだけで、こんなに幸せになれる世界がまだあっただなんて。



「これからもよろしくね、ありがとう。アズ、大我、慎吾」



あたしはここに転校してきて、はじめて良かったって思うことができた。

ただ、空いていたおばあちゃんの家から近くて選んだこの学校。
でも、この3人に出会う運命だったんだって今なら思える。



「碧」


「碧ちゃん」


「碧.......「お前はちゃんをつけろ」



それぞれの声であたしの名前を呼んでくれる。

人に名前を呼ばれることの幸せをその時、はじめてあたしは知った。



「おい、なんでちゃん付けんだろよ」


「呼び捨ては俺の特権だ」



そんなやり取りをする2人も微笑ましくて仕方ない。

やっと、ここでの居場所を見つけられた。
そんな気がした。

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