同期は蓋を開けたら溺愛でした

「こういう時に可愛い声出して甘えるとか、卑怯だぞ。俺に甘えるなんて天地がひっくり返ってもしないくせによ。シラフの時に甘えろよ」

「酔ってないし」

「酔ってるよりタチ悪いわ」

 頭を乱暴に掻きむしった大友は立ち上がって玄関の方へ行くとレジ袋を漁る。

「急いで買い物して来たから、今日は惣菜な」

 ベッドから体を起こすと軽く眩暈がする。
 それでも、背を向ける大友のその背中にしがみついた。

「……だ、か、ら。いい加減にしろって言ってるのが聞こえないのか。お前は」

 腕を回しても手が回りきらない大きな背中に私は必死にしがみつく。

 深いため息をついた大友は私がしがみついていても、ものともせずに買ってきた惣菜をレンジに入れる。

「とりあえず何か食べろよ。青白い顔しやがって」

 大きな子どもみたいにしがみつく私の頭を背負ったまま撫でる大友の手が優しくて、涙が勝手に流れ出す。

「ったく。普通に抱きしめて慰めたいわ。色気のないやつ」

「ギュッってしてって言ったのに、断ったのそっち」

「あれは意味が違うだろ。意味が」

 再び怒り出す大友がおかしくてクスクス笑うと「やっと笑ったな」と安堵したような声が聞こえた。
 その声に胸が熱くなって、再び目に涙がにじむ。

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