同期は蓋を開けたら溺愛でした

 気づけばイルカショーは全ての回が終わってしまっていた。
 ほとんどの時間、クラゲを眺めてぼんやりしていた。

「どうする? 他も見るか?」

「うん。クラゲだけってのもね」

「俺はそれでもいいけどな。ものすごく贅沢な時間の使い方してる気がする」

 大友の言い方が素敵で、つないでいる手にもう片方の腕を絡めてギュッと腕に抱きつく。

「……どうした?」

「大好き、だなぁって」

 つい、胸にしまっていた想いが口を出る。

「ああ、そう」

 無感動な声を聞いて「クラゲがね」とわざと茶化した。

「おいおい。俺はクラゲに嫉妬すればいいわけ?」

 頭をかき回され、笑って立ち上がると、先を歩いていこうとする大友を追いかけた。

 クラゲだけってのもね、と言いつつ、次はペンギンのところで同じように眺めるだけの時間を過ごした。
 ほとんどクラゲとペンギンだけを見て「そろそろ帰ろうか」と、水族館を後にした。


< 267 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop