ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
保安官は事情が飲み込めないような面差しをしていたが、背中にあるはずのぜんまいがないことに気が付き、あんぐりしている。

あたしは荷物の中から真っ赤な林檎を1つ、取り出して、スカートで擦った。

「……君? 何する気?」

保安官はまさかそれはしないだろうと、薄い笑みを作っている。

「いただきます」

一口林檎を頬張った。保安官が見る見る顔面蒼白になる。

「ん、美味しい林檎」

あたしは本音の感想を漏らした。

「た、逮捕だ。逮捕!」保安官は取り乱した。

あたしは笑顔で両手を差し出す。

「是非お願いします」

やすやすと御用になり、まんまと聖都城への無料チケットを手に入れた。

ただし、それは片道だけど。
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