ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し

台所でサナエが石壁のメーターを見てぼやいた。

「変やな、こんなに水かさが減ってるわ。三日でここまで減るなんて。何でやろ」

ぎくりとした。毎日しこたまシャワーを使っていたからか。

ここでは水は貴重らしい。

外は乾燥しきった荒野だし、川までは遠い。雨が降っているのも見たことがない。気をつけねば。

どうやって生計を立てているのか。

生活資金の調達はメタボロン毛のルークの右手に掛かっていた。

彼は漫画家だった。

ルークが漫画を描き、原稿を出版社に送り、原稿料が入る。それで必需品を購入する。

ルークが描いているのはピュアな少女漫画だ。

こう言うと失礼だが、見掛けによらずルークはロマンチストだった。とても。

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