ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し

創手、その人

そこは圧倒される程のだだっ広い空間だった。

高い天井から眩いシャンデリアが幾つもぶら下がり、壁や柱は金の装飾がびっしりと施してある。

眩しいわけだと思った。不景気とは無縁の絢爛さだ。

「お進み下さい」

有無を言わせない目でグレンヴィルが奨める。

致し方なく、その広間に踏み出した。

中に入って更に仰天した。人が大勢いたのだ。着飾った貴族風の人々が、微笑しながらこちらに注目していた。

綱渡りをさせられているような、何とも不安定な心地になる。

真っ赤な絨毯の引かれた壇上では、天使の壁画が色彩を放ち、それを背景にするように金の巨大な玉座が据えられている。

そこに鎮座する人がいた。無意識に息を飲む。

「恐れ多い。頭が高いですぞ」

近い声に、後ろにグレンヴィルが控えていたことに初めて気が付く。

彼はお辞儀をし、胸に手を当てながらあたしに目で指図している。真似しろということか。

あたしは瞬きしながらお辞儀をした。

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