その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
選択肢はふたつにひとつだ、とばかりに広沢くんが私に迫ってくる。
私は額を押さえたまま、意地悪く笑いながら顔を覗き込んでくる広沢くんから顔をそらした。
「わかった。資料はあなたに任せる」
「了解です」
広沢くんがにこっと歯を見せて笑う。
なんだか負けたみたいでとても悔しい。
悔しいから、怠さがそろそろ限界にきている身体に鞭を打って、颯爽と歩いてオフィスを出てやった。
オフィスを出て外気に当たると、寒い季節でもないのに急に悪寒がした。
これは早く寝ないと、本格的にヤバい。
足がよたよたしてしまって、電車に乗るまでの道のりが遠いかった。
なんとか電車に乗り込んで、手すりにしっかりつかまって立って倒れそうになるのを持ちこたえ。
ふらふらした足取りで家に着く頃にはもう身体に力が入らないくらいに疲れてしまっていた。
玄関先で靴を蹴り出すようにして脱ぐと、壁を伝って歩きながらカバンとともにベッドにダイブする。
着替えないとスーツがシワになってしまう。
ぼんやりとした頭で思ったけれど、もう体が動きそうもない。
明日早起きすればいいわ。
カバンからゴソゴソとスマホを取り出すと、目覚ましをかけてそのまま重たい瞼を閉じた。