極上御曹司のヘタレな盲愛
桃をなんとか説き伏せて一緒に出勤すると、途中、高橋が乱入するというハプニングもあったが、高橋に俺達がすでに婚約している事を宣言できたし、会社前でのそのやり取りが、またうまい具合に女子社員達の噂を煽って、案の定、俺と光輝は4階女子更衣室前の廊下で、2課のアシ達や受付の例の女達が桃を責め立てる声を聞いていた。

「これで一掃できるな」

ニヤリと笑う光輝に頷きながらも、色々言われている桃の気持ちを思うと胸が痛んだ。

その時 …桃の可愛い声が聞こえた。

え?あの桃が…自分から…俺と結婚するって他人に言っている?
しかも…政略結婚ではないって反論するって…そこには愛があるって宣言だろ?信じられない!
俺はそんな時なのに頬が緩むのを止められなかった。
ふと気づくと光輝がニヤリと笑って俺を見ていたので、よほどデレた顔をしていたんだろう。


その後は…俺と光輝が思っていた通りにほぼ事が進んだ。

2課のアシを一掃し、桃に嫌がらせをする女どもを牽制し、女子社員達の間で噂される桃の汚名をそそぐ事に成功した。

光輝のおかげで、桃の同期の間で言われていた、桃が気に入らない同期を社長に頼んで辞めさせたというのもデマだと女子社員達にわからせる事が出来た。

俺が桃を溺愛している事も…。

新しい噂は…きっと…あっという間に会社中に広まる事だろう…。


ただ一つ誤算はあの受付の女…。
花蓮の自称親友の斎藤紫織…。

学生時代から桃に散々嫌がらせをしていたあの時のあの女…。

会社に入ってからも、桃に関する悪口…数々のデマを流した張本人だ。


実は…。
桃には言っていないし、今後も言うつもりはないが…。

俺が20歳を超えたぐらいからか…。
ST製薬の社長からは、表立っても、それ以外にも、様々な手を使って俺と娘との見合いを、再三にわたり何度も何度も求められてきた。

大企業の直系御曹司の俺には、この歳になるまでには他に数多くの見合い話もあったが、俺が桃にベタ惚れな事を知っている親に、悉くそれを断らせていた。

見合い話が多く持ち込まれるのは、光輝や悠太、花蓮…もちろん桃も同様だったが、桃の所には一切話が行かないように、似鳥のおじさんとおばさんに頼んだのは、桃が高等部の時だったな…。

そもそも俺がニタドリで働いているのは桃を得るためだと、桃以外の周りの人間はみんな知っている。
うちの親も、将来…俺は桃と絶対に結婚すると信じてくれていた。
だから、うちに来る見合い話なんかは、適当に女と遊んでいる兄貴の所に行く事が常だったのだが…。

何度断ってもST製薬の社長は、どうしてもと俺を名指しで…諦めなかった。

初めは…そのST製薬社長の娘が、学生時代…中等部の昇降口…桃に嫌がらせをしていたあの女である事を知らず、なぜこうまでして俺との婚姻を強く望んでくるのかわからなかった。

見合いなんかする気もないので写真なんかは全く見る事もなかったし…。

あまりのしつこさに、人あしらいの上手な親父が、パーティーなどでST製薬社長の顔を見ると頭痛がすると言い出すくらいだった。

しかも、親を通してくる話は断り易いのでまだいいが…。
親戚などを通して回りくどい手を使ってくるのには本当に辟易した。
だがそれも、水島の祖父の『大河に見合い話を持ち込む事を一切禁ずる』という一族への御達しがあり、とうとううちには届かなくなった。

だがST製薬の社長は全く諦めない。
その後も手を替え品を替え、娘と俺をくっつけようと様々な罠を仕掛けてきた。

それもあり、俺と光輝はニタドリに入社するとすぐにアメリカに赴任する事になったんだ。

アメリカでは仕事と並行して、約束のため様々な資格を取らなければならず、忙しい日々を送っていた俺は、大学生になった桃に悪い虫がつかないように弟の航我を買収して見張らせていた。

そんな航我から、ある水島のパーティーで…とうとう桃に、ST製薬社長の手が伸びた事を聞いて、体が震える程の怒りを覚えた。

桃を助けてくれたという兄貴に、滅多にしない感謝をしたが…。
どうしていつも桃を助けるのが俺ではないのかと、アメリカで一人悔しさに歯噛みした。

その事があり、ST製薬は水島のパーティーには事実上出入り禁止となった。

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