極上御曹司のヘタレな盲愛
「水島桃さんのご家族の方…」

光輝と二人で立ち上がると、看護師と目が合った。

「こちらにどうぞ」
と処置室横の小部屋に通される。

「えー、水島桃さんですが…歩道橋の階段の上から落ちたと言う事ですね…。
検査の結果…内臓に損傷も無いようですし、骨折などもなく、命に別状はありません。
下にいた方に受け止められたと言う事で、下まで落ちて地面に体を打ち付ける事が無かったのが幸いでしたね」

……っ!
医師の説明を聞いて航我に心の底から感謝した。

「次に…頭の怪我ですが…。
こちらも検査の結果、脳の損傷は無いと思われます。傷の方も、飲酒後だったという事で出血は多かったようですが、傷自体はそんなに大きなものではなく、3針ほど縫わせていただきました。
すぐに目も覚めるかと思われますが…なにぶん頭を強く打っていますから…。まあ、目が覚めてみない事には、実際に何があるかわかりません。
なので今日は入院してもらって、目が覚めて明日精密検査をして何もないようでしたらその後退院という事になります…」

光輝と二人でひとまずホッと胸を撫で下ろしていると、ノックの音とともに、一人の男性が部屋に入ってきた。

「大河!」

「叔父さん!」「院長!」

医師がさっと立ち上がる。
叔父は医師の肩を「お疲れ様」とポンと叩き、俺に言った。

「親父と兄さんから今、大河の嫁さんが救急で運ばれたって連絡があったんだ…」

祖父さんや親父には、桃の処置を待つ間に連絡をしておいた。

「似鳥のお嬢さんだって?桜おばさんにそっくりな方の…」

「うん…」

「それは親父が出来るだけの事をしてやってくれと、慌てて電話をかけてくるわけだな。そのうち母さんからも電話があるだろう。
で…お前、いつ結婚したんだ?」

「今朝…入籍したばかりなんだ…」

叔父は、何とも言えない顔で俺の肩をポンポンと叩くと、医師に桃の状態を訊いた。

「命に別状は無いようで本当に良かった。
という訳で、うちの身内の子なんだ。出来るだけの事をしてやってくれ。宜しく頼むよ」

と医師の肩をまたポンと叩き、部屋を出て行った。


その後、桃は病棟の特別室に移され、暫くすると似鳥のおじさんとおばさん、花蓮が、桃の入院の準備をして部屋に入ってきた。

俺と光輝から、桃の状態とこうなってしまった経緯を説明する。


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