極上御曹司のヘタレな盲愛
「ごめん…おじさん…。俺、桃を守れなくて…。昼に…桃を頼むって言われて…任せとけって言ったばかりなのに…こんな事になってごめん…。
おばさんも…ちゃんとまだ報告する前だったけど…俺がもう桃の家族なのに…。入院準備とか…ちっとも気が回らなかった…。桃のもの…全部俺ん家にあるのに…本当にごめん…」

俺が2人に向かって深く頭を下げると、おじさんが俺の肩をポンと叩き、おばさんは俺を抱きしめ背中を優しく摩ってくれた。

「…桃…」

振り向くと、花蓮が桃の枕元で泣いていた。

「桃…ごめんね。私があんな女、いつまでも黙って側に置いておいたから…。
大河の事で、あの女が桃にずっと嫌がらせをしてるのだってわかってたのに!
同期の中の噂だって、私がちゃんと言えば消えた…。あんな女大嫌いだったのに!
はっきり言わない桃の心の問題だって、いつも突き放して見てた…。
私と双子で生まれたせいで自分が不幸になってるって…桃が思ってる気がして…。
桃が、光輝や大河と一緒に私まで避けるから…私も意地になっていたの…。
悠太との婚約の事だって…あんな所でみんなに発表するつもりなんて全然無かったのに!
あの女にチーフとの話をこっそり聞かれてて…。桃にまだ言ってないから発表なんて出来ないって言ったら…アイツが嬉々としてあの場で発表し始めたの…。
ただ…桃を傷つけたいがために…!
あの女の執念深さを一番知ってるのは私なのに!
こんな事…今更言っても遅いけど!桃…ごめんね…。全部!私のせいだ!私が…っ!
目が覚めたら、ちゃんと全部言うからね。
ほんとに…ごめんなさい…」

「花蓮…花蓮のせいじゃないよ…」
光輝が泣き噦る花蓮の肩を抱く。


みんな…後悔ばかりなんだぜ…。
桃…早く目を覚ませよ。
目を覚まして…俺の…花蓮の…みんなの懺悔を聞いてくれ…。


でも…。


桃がその日、目を覚ます事はなかった…。
その日どころか、次の日になっても…その次の日も…。
夏期休暇が終わってしまっても…。


仕事帰りに桃の病室に寄り、桃の眠っている顔を見ながら、持ち込んだパソコンで残った仕事を終わらせる…。

桃の手を握り、そのまま軽く眠って明け方マンションに帰り、シャワーを浴びて着替え…また出社する…。
それが俺の日課になった。


ずっと暗闇の中にいるようだった…。

そんな日々が続き…8月が終わり…。
9月も10日ほど過ぎた頃…。


桃はようやく目を覚ました…。


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