極上御曹司のヘタレな盲愛
「やっと…ちゃんと言えた…」

「ごめんね。私がこんな事になって…おめでたい事に水を差すみたいになっちゃって…」

「ううん!いいの。…いいのよ…」

首を横に振って泣き続ける花蓮に少し戸惑う。
だって!本当に普段泣く子じゃないのよ…。
泣き虫なのはいつだって私で…。

花蓮を抱きしめ背中を摩りながら、ベッドの足元に立つ悠太に…。

「悠太…花蓮をよろしくね。悠太と家族になれるなんて本当に嬉しいよ」

そう言ってニッコリ笑うと…悠太の横にいた大河と目が合ってしまった…。

『俺が…子供の頃から、ずっと好きなのは誰か知っているか…』

昨夜…私にそう訊いた大河…。

大河は子供の頃からずっと花蓮を好きだった…。
でも花蓮は悠太を選んでしまったんだ…。
辛いよね…。

天敵だけど、なんだか気の毒で胸が痛くなって慌てて目を伏せた。
私には…どうにも出来ない…。


「おじさんとおばさん、遅いな…。俺、ちょっと見てくるよ…」

不意に大河はそう言うと、病室を出て行った。

やっぱり居心地悪いんだろうな。
花蓮と悠太を見ているのは辛いだろうし…。

しばらくして父と母が戻り、光輝、花蓮、悠太と一緒に帰って行ったが、大河が戻ってくる事はなかった。

でも…なんか不思議な感じ…。
何年も何年も、ずっと出来るだけ避けてきた家族や幼馴染…。
意外と普通に話せたり、笑いあえたり…。

多分、病院っていう逃げられない環境にいるからだと思うけれど。
まさに怪我の功名って、こういう事なのかな?
でも…会社に行き始めたら、また逃げ回る毎日が始まる。


その後、夕方に美波先輩と恵利ちゃんがお見舞いに来てくれて、2人に散々泣かれてしまった。

みんなにこんなにも心配をかけて…。
本当に、酔っ払って階段を踏み外したかなんかして落ちちゃったんであろう自分のドジを呪いたい!


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