極上御曹司のヘタレな盲愛
「悠太…ごめんね、会社を何日も休んじゃって…。美波先輩と恵利ちゃんに、いっぱい迷惑かけちゃってるよね…」

「会社の事は大丈夫だよ。でも須田さんも森山さんも、一緒にご飯を食べた後に桃ちゃんがこんな事になっちゃったからずっと落ち込んでて…。何度もお見舞いに来てたよ。
今朝、電話で桃ちゃんの目が覚めたって言ったら、二人とも泣いてたよ」

「……っ!」

仕事で迷惑をかけただけでなく、そんなに心配をさせてしまったんだと申し訳なくて、私の目にも涙が浮かんだ。

一瞬…大河が動いた気がしたけど、それを遮るように光輝が私の頭に手を伸ばし、頭を撫でた。

「大丈夫。こうして目が覚めたし、すぐに仕事にも復帰できるさ。
で…どうなんだ?気分は…。記憶を失うなんて、なんかドラマのヒロインみたいだな。
やっぱり…ショックか?」

「うー〜ん。あのね、実を言うと…あんまりショックを受けていない自分に驚いてるよ。
午前中にね、検査を色々受けながら考えてたんだけど…。どうせ、怪我をする前のたった1週間か2週間そこらの記憶だよ。
そんな短期間で、運命が変わるような出来事があったとも思えないし…。
会社と家を往復して、たまに先輩や恵利ちゃんとご飯に行ったりするだけで、たいして代わり映えのしない毎日だったんだと思うよ。
むしろ…。
あんなに憂鬱だった慰安旅行が、知らない間に終わっていて…ホッとしてるって言うか…ラッキーって言うか…そんな風に思っちゃった」

えへへと光輝に笑って見せると、一瞬、光輝の目が泳いだ気がした。

ん?光輝だけじゃない?
なんかみんなが目を見交わして、その後に目が泳ぐっていう…?なんだろう、変な感じ!

「なによ…。なんなの?何かあるの?」

不思議に思って訊くと…ベッドサイドの椅子に腰掛けていた花蓮が、私の手を握ってビックリする事を言い始めたので、そんな変な空気も吹き飛んでしまった!

「ねぇ、桃…。聞いて…。
あのね、私と悠太…、実は今年の初め頃から付き合っていてね。今度、結婚する事になって…その…私たち…婚約したのよ…」

「えーーーッ!」

そういえば…5月の創業記念の打ち上げで…。
手を握って見つめ合っている2人を見たんだよね。
驚いた!2人…付き合っていたんだ!

驚いたけど…。

「おめでとう…。わぁ…嬉しいな…」

花蓮の手をギュッと握り返しニッコリ笑うと、花蓮はその大きな瞳からポロポロと大粒の涙を流した。


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