極上御曹司のヘタレな盲愛
我が家のダイニングテーブルは8人掛けだ。
ゆったりしているので7人で座っても全然狭くはない。

料理上手の母が作ったたくさんの美味しそうな料理がのった食卓をみんなで囲む。

家族や…幼馴染たちと楽しくお喋りしながら夕飯を食べる…。
事故の前には考えられなかった光景に、暫しぼーっとする。

本当に、青天の霹靂とは…こういう事を言うのよね。

ずっと逃げ回ってばかりだったから、こんな日が来るなんて思いもしなかった…。

「みんなでお夕飯なんて、いったい何年振りかしら…。やっぱりいいわよね。楽しいわ…」
母も終始ニコニコしている。


花蓮と悠太の結婚式が、来年の春に決まったという話で盛り上がった。

花蓮の花嫁姿かぁ…。綺麗だろうなぁ…。
悠太のお家も名家だから、さぞかし大きな披露宴になるのだろう。

私もいつか…お嫁に行くのかな…。
隣に座っている大河の顔をそっと見上げた。
昨夜、大河に『結婚して…家族になろう…』って言われたけど…。
昨日付き合い始めたばかりだし…まだまだどうなるのかなんてわからない。

結婚なんて…今の段階では全然考えられないよね…。

なんて考えていたら、父がポツリと呟いた。

「それにしても…来年度からは会社が寂しくなるなぁ…」

「?」

私にはさっぱり訳がわからないけれど、みんなウンウンと頷いている。

向かいに座っている光輝に「どうして?」と訊くと…。

悠太は30歳になる来年度中にニタドリを辞めて、国会議員のお父様の元で秘書をしつつ、将来お父様の地盤を引き継ぐ為の勉強をするらしい。

花蓮も結婚を機に会社を辞めて、悠太とお義父様のサポートに回るんだって。

うん!花蓮なら政治家の妻にピッタリ!
選挙で勝ってニコニコ笑っている絵になる2人が想像できるよ。

大河も…元々30歳になるまでに水島に戻ると、水島のお祖父様と約束してニタドリに入社したんだそうだ…。

なんだか知らないけれど、ニタドリに入社しなくてはいけなかった理由もクリアしたらしく、来年早々にニタドリを辞めて水島に戻るという事だった。

「そうなんだ…」
父が寂しくなると言った意味がようやくわかった。

「なんだよ、桃。…お前も寂しいのか?」

隣から大河が顔を覗き込んで訊いてくる。

「寂しいよ…当たり前でしょ。大河はともかく…悠太は直の上司だし…。
いっぱい仕事も教えて貰ったし、色々助けても貰ったし…」

「俺はともかくって…どういう事だよっ!」

「ふぎゃ…っ!も…鼻取れちゃうって!」

大河が鼻をギュウッとつまんでくる。

「大河…いい加減にしておけよ。また逃げられるぞ…」

光輝が言うと、大河はすぐに手を離したが…。

「ぷッ!赤鼻のトナカイみてぇ…!」
私の顔を見て吹き出した。

もう!イジワル!全然変わってない!
と思ったら…。

テーブルの下で、大河の手が…私の鼻をさすっていない方の手をキュッと握って…指を絡めてきた…。

もう!ずるいっ!

見上げると…甘く優しい笑顔…。
ドキンッ!

えっと…少しは…変わったのかな…。


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