極上御曹司のヘタレな盲愛
「ただいま〜」

「おっ、帰ってきたな」

「桃、体の方はもう大丈夫なの?」

「あら〜、たくさんお買い物したのね〜」

「だって…大河が…!」

お買い物から帰ると、リビングに父、光輝、花蓮、悠太が揃っていた。
母もキッチンから出てきて迎えてくれた。

「だって大河が…いいって言うのに、退院祝いだからって、いっぱい買ってくれちゃうんだもんっ!」

スマホも「これがいいかな〜」って言ったらすぐに「何色?」って訊かれて、手続きを大河がさっさと終わらせてしまった。
「お前はあっちで座っていろ」って…。

その後で寄ったデパートでも…。
秋物の服を何着も私に当てて、満足げに「うん、可愛い!」と呟くと、どんどん買ってしまう。服に合わせて靴もバッグも!

止めても「いいだろう。退院祝いだし…。俺…お前の彼氏だし…」って言うばかりで…。

生まれて初めて男の人と付き合う事になったけど…。
世の中の彼氏って…みんなこうなの…?こういうものなの…?

買い物をしている間も…。歩いている時も…。
手を繋いでいない時は、大河の手が私の腰や肩や背中にずっと回っているし…。
レジ待ちの時なんかは、ずっと優しい目で見つめられ…髪を撫でられて…。
ただでさえ、大河のせいで目立つのに!
店員さんも周りのお客さんも頬を赤らめていた。

生まれて初めて男の人と付き合う事になったけど…。
世の中の恋人達って…みんなこんなに距離が近いの?
何時もくっついているものなの⁉︎

何もかも初めての私は、もうずっと恥ずかしくてたまらなかった…。


「大河…お前…いきなり全開だな…」

「うるさい…。俺は誰に何を言われようが、これから桃に尽くして尽くして…甘やかしまくるって決めたんだよ!」

光輝に言われて、開き直ったように尊大に言い放つ大河に、私はまた赤面してしまう。

そんな私達を見て、父と母、花蓮と悠太はクスクス笑いが止まらない。

そういえば、まだ私達が付き合う事をちゃんと家族に言っていなかった。
なぜかみんな、私達2人を見ても、そんなに驚いていないけど…。

みんなが揃っている今、ちゃんと言っておこうかな…。

「あのね…」

みんなが私の顔を見る。

「あのね…。この度は…いっぱい心配かけちゃって、本当にごめんなさい」
ペコリと頭を下げる。

「あとね…。私…大河と付き合う事になりましたっ!」

多分、真っ赤になっているに違いない。
母には大河とキスをしている所を見られちゃったかもだし…。
父にそれを報告されているかもしれないし…。
もう恥ずかしすぎる!

「お母さん!荷物を部屋に置いたら、すぐに夕飯の準備手伝うからねっ!」

そう言ってみんなの反応も見ずに、私は早々に逃げ出したのだった。


< 142 / 179 >

この作品をシェア

pagetop