極上御曹司のヘタレな盲愛
本来なら今頃、私が所属する庶務係は今日の創業記念パーティーのため、会場設営、料理や飲み物の手配などを引き受けて大忙しなのだが。

私が今いる場所はホール横にある控え室だ。

今日のパーティーで4つ上の兄、光輝の常務取締役就任のお披露目があるため、私は花蓮とともに、社長の娘としてドレスに着替えて壇上に上がる事を言いつけられていた。

「はぁ」
自分でも気づいていないが今日何度目か知れない溜息を吐く。

そんな私をチラッと見た花蓮は、かかっている2種類のドレスのうちの一方を手に取ると小物、靴を選び着替え始めた。

身長156㎝の私と比べて10㎝以上も背が高い花蓮は、8.5頭身。
体にピッタリとしたロイヤルブルーのドレスは花蓮のスタイルの良さを引き立てている。

小さな頭に、意志の強そうなキラキラした大きな焦茶色の猫目を長い睫毛が縁どり、すぅっと通った形の良い鼻、口角の上がったバラ色の唇が完璧な配置で並んでいる。

姉の私でさえ見惚れてしまうドレス姿。

そんな花蓮を見て。

「はぁ」
またも溜息を吐くと私も残った方のドレスを手に取った。

「早く着替えないと美容師さんが来ちゃうわよ」

「うん」
花蓮に言われて着ていた会社の制服のボタンを1つ外した時、私のスマホが震えた。

見ると同じ庶務係で2年先輩の、須田美波からだった。


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