極上御曹司のヘタレな盲愛
「はい桃です。美波先輩どうしました?」

『桃ちゃん!大変!緊急事態!恵利ちゃんが倒れた!』

聞くと、パーティーの準備にあたっていた庶務係で1年後輩の森山恵利が、倒れて医務室に運ばれたという事だった。

ヤバイ!ただでさえ私が抜けてギリギリの人数で動いていたのに!

「美波先輩!待ってて下さい!私すぐに行きますよ!」

恵利ちゃん。昨日も遅くまで残業して今日の準備をしていたよね。
そういえば。今日は朝からずっと顔色が悪かった。
大丈夫かな、心配だ。
でも!とりあえず今は!

ドレスと、外した制服のボタンを元に戻して、花蓮に状況を説明してから私は控え室を飛び出した。

ホールで美波先輩と合流してテーブルの上に軽食を次々と並べていく。

全部並べ終わる頃には開場時間が迫っていた。

なんとか間に合いホッとする間もなく、その後もタイムテーブル表に沿って倒れた後輩の仕事をこなしていく。

忙しく駆け回りながら、恵利ちゃんには悪いけれど、私は、社長の娘として花蓮と一緒に壇上に上がらなくてもよくなった事にホッと胸を撫で下ろしていた。

開場時間になり、来賓、社員と、お客様が次々とホールに入りパーティーが始まった。

ホール内が暗くなり壇上中央にスポットライトが当たると、盛装した社長である父、母、光輝、花蓮が並び、その周りを重役の方々が囲んでいる。

美魔女と言われる母と花蓮はとてもよく似ていて、父方の祖母とソックリと言われる私とよりずっと双子っぽい。

やがて父のスピーチが始まると、ざわついていた会場内がシンと静まる。

私はそちらに目をやる事もなく、スピーチ後の乾杯用の飲み物を大量にワゴンにのせて他の庶務係の方々と、お客様に配って回っていた。

父の口から、兄の光輝が常務取締役に就任する事が発表されると会場から盛大な拍手が起こった。

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