極上御曹司のヘタレな盲愛
なんだかわからないけど、滅茶苦茶怒っている大河の方を見ないようにしながら。

「もう行かなきゃ!高橋君、楽しかった。誘ってくれてありがとう」

とお礼を言い、ベンチの2課の皆さんや、対戦相手の皆川主任や鈴木君に。

「混ぜてもらってありがとうございました。とても楽しかったです」
と恵利ちゃんと二人で頭を下げる。

「桃ちゃん、恵利ちゃん、またテニスやろうね!」
「桃ちゃん、次は俺と組もうな〜!」

と次々に声をかけられ、なぜみんな桃ちゃん呼び?と思ったが、もう一度皆さんに頭を下げるとテニスコートを後にした。

金網のゲートをくぐる時、ふとコートの方を見ると依然怖い顔をした大河と目があってしまったので、慌てて目を逸らした。

フェンスの外で試合を見ていたギャラリーの中に花蓮は居なかったが、斎藤さん達、受付チームの人達がいて、ヒソヒソこちらを見て話していた。

「男好き!」
「残念な方のクセにいい気になって!」

「張り切っちゃって馬鹿みたい」
「ほんと、腹立たしいったらないわ!」

近くを通り過ぎる時、態と聞こえるように言われた。

「男好きじゃなくて、テニス好きなんですよ!羨ましいなら入れば良かったじゃないですか!」
言い返す恵利ちゃんの腕を引っ張って、コテージへと向かった。


コテージに戻り、恵利ちゃんと交代でシャワーを浴び終えて出ると、私のスマホが鳴ったので見る。

『14時チェックアウト後、俺の車の所で待て』

大河から、果たし状のようなメールが入っていて震えあがった!

み…見なかった事にしよう…。



まだいないよね。

キョロキョロと駐車場を見回し、コソコソと荷物を持って車の陰に隠れながら移動する。

目指すは庶務係の有田さんのハイブリッドカー。
行きに美波先輩と恵利ちゃんを乗せてきた車。
有田さんに、私も帰りに乗せてくださいとお願いしたら、快諾して貰えた。

14時より30分くらい前に「早く早く!」
とみんなを急かしてチェックアウトし、今に至る。

無事にハイブリッドカーの後部座席に収まると、深い溜息が漏れた。


14時を過ぎた頃から次々と、大河、光輝、花蓮、悠太から着信が入った。

花蓮に『庶務係の人達とすでに帰路についています。昨日の話は帰ってから聞くね』
と送信し、スマホの電源を落とした。

家の最寄りの駅で降ろしてもらうまで、4人でお喋りしたり、途中のサービスエリアでご当地スイーツを食べたり、お土産を見たりと楽しく過ごした。


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