極上御曹司のヘタレな盲愛
それから…俺達も双子も大きくなっていったが…。
大きくなるにつれて、たとえ親が弟を妹に取り替えてくれたとしても、俺は満足できなかったなと結構早い段階で気づいたんだ…。

桃じゃなきゃ…ダメなんだって…。

桃に頼りにされたい。
ニコって笑ってギュッと抱きついて欲しい。
俺以外の他の男の目に触れないように、自分の背中にずっと隠しておきたい。

兄妹だと結婚できない事を知って、心の底から嬉しかった。

光輝よ!今のうちに桃を可愛がっておくがいい。
そのうち俺が桃をもらうんだから…と一人で勝手に光輝に勝った気になっていた。

だったら…悠太のように素直に桃に優しくしておけば良かったんだよな…。


双子が初等部に上がると…もう花蓮は有名な美少女で…加えて運動も勉強も半端なく出来たから、周りに人が絶えなかった。

それに比べて桃は…元々恥ずかしがり屋なので、友達作りもままならなかったようだ。

運動も勉強も人並み以上には出来、努力家でコツコツやるタイプなので成績も決して悪くなかったのに、自分と花蓮を比較して…自分を卑下してばかりいた。

そんなのタイプの違いなんだから、全然気にする必要なんてないのに!

顔だってぱっと見、みんな華やかで派手な花蓮に目が行きがちだが、俺は…小作りで控えめだけど、優しい桃の顔がどストライク!世界で一番可愛いと思っていたのだ!

しかも…桃って滅茶苦茶いい匂いがするんだよな…。

そう常日頃思ってはいたが…。

思春期にそろそろ差しかかろうとしていた俺は素直になれず…。
ベタな『好きな子をイジメてしまう』という王道を選んでしまったんだ。

桃は元々少し下がり眉だが、困るともっと眉尻が下がりハの字になる。
俺はタチの悪い事に、桃のその困り顔が大好きだった。

なんというか、困って眉尻を下げた桃がちょっと小首を傾げて上目遣いで俺の顔を見上げると…なんだかドキドキしてゾクゾクして…萌える…。

泣き顔もめちゃ可愛くて…。

その顔見たさに俺は桃に、くだらないイタズラや意地悪をよく仕掛けた。

「いいものやるよ」
とカエルを手のひらに乗せてやったり…。
桃が大事にしていたシロクマの縫いぐるみをパンダにしてやったり…まあ…色々と。

その度に悠太には
「桃ちゃんを困らせるの、やめろよ!」
と怒られ、光輝も花蓮も呆れていた。


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